大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和35年(ラ)547号 決定

一、抗告人の代理人は「一、原決定を取り消す。二、相手方は原決定添附目録および図面に示す人形頭の製造方法を使用して、人形頭を製造してはならない。三、相手方は前項の方法を使用して製造した右物品を販売拡布してはならない。四、相手方の第二項の製造方法により製造した製品、半製品およびその原料ならびにその製造に使用する型に対する占有を解いて抗告人の委任する浦和地方裁判所執行吏にその保管を命ずる。執行吏は封印その他の方法により右物件の使用および販売ができないようにしなければならない。五、本件申請ならびに抗告費用は相手方の負担とする。」との決定を求め、末尾記載のとおり、その抗告理由を主張した。

二、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

原決定は、抗告人主張の特許権が抗告人の名義において形式的に存在することは当事者間に争がない、としながら、抗告人の疏明によつては、右特許発明が抗告人単独の発明であることを認めることができないので、抗告人単独名義で抗告人単独の発明として出願、公告、登録された本件特許は無効であるといわなければならない、として、該特許権を被保全権利とする抗告人の本件仮処分申請を却下したものである。しかし、特許権は設定の登録により発生するもので(特許法第六六条第一項、旧法第三四条)、特許査定および設定登録を含む一連の行政処分によつて形成せしめられるものである。したがつて、たとえ特許が特許を受くべき権利のないものによる冒認出願にもとづき与えられる等、無効の原因を包蔵するものであつても、特許法第一二三条(旧法第五七条、第八四条第一項)による無効の審判を経ないかぎり、特許の効力を保有するものといわなくてはならない。(大正一一年一二月四日大審院判決、集一巻七一三頁参照)してみれば、原決定が抗告人主張の特許につき無効の審判があつたかどうかを審究しないで、たやすく右特許を無効であると断じたことは、法律の解釈を誤まつたもので、とうてい取消をまぬがれない。よつて、原決定を取り消す。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!